産業廃棄物を委託処理する際に、処分と収集運搬を依頼することが一般的です。
そんな中で「自社運搬」と呼ばれる行為があります。
産廃処理において、自社運搬とはどのような行為になるのでしょうか。
また、適正に運用するための条件は何があるのでしょうか。
今回のコラムでは、自社運搬について詳しく解説していきます。
目次
自社運搬とはどういう行為?
自社運搬とは、自社で排出した産業廃棄物を自らが処分場まで運搬することです。
簡単に言えば、収集運搬を自分たちで行うことになります。
例えば、自社の工場や倉庫から出る廃棄物を自社便で処分場まで持ち込む場合です。
他にも自社間で産業廃棄物を移動させる場合も該当します。
自社運搬と委託との違いは?
大きな違いは、収集運搬契約が不要になる点です。
そのため、自社で収集運搬業許可を取得していなくでも運搬が可能になります。
また、運搬車両の届け出も不要です。
ただし、いくつかの条件を満たした状態で運搬を行う必要があります。
自社運搬の条件とは?
自社運搬を行う場合の条件について解説します。
車両表示
産業廃棄物を運搬する車両へ以下の表示をしなければなりません。
・「産業廃棄物収集運搬車」を5cm以上の大きさ
・「会社名」を3cm以上の大きさ
これらはマグネットシートなどで着脱可能なものでも問題ありません。
ただし、シートなどを被せた状態で表示が隠れてしまうと、表示義務違反になります。
詳しくは環境省のこちらをご確認ください。
書面を携帯すること
運搬時に産業廃棄物の情報を記載した書類を携帯する必要があります。
具体的には以下の情報が必要です。
- 氏名又は名称及び住所
- 運搬する産業廃棄物の種類、数量
- 運搬する産業廃棄物を積載した日
- 排出事業場の名称、所在地及び連絡先
- 運搬先の事業場の名称、所在地及び連絡先
これらの情報は紙でなくても、電子情報で確認できるものがあればそちらでも代用できます。
一般的には、マニフェストがこれに当たるため、紙マニフェストを携帯することで解決できます。
収集運搬基準の順守
廃掃法において、収集運搬における基本的な基準になります。
生活環境の保全上問題が生じないよう徹底して運搬することが重要です。
1.廃棄物が飛散、流出しないようにすること
2.悪臭、騒音又は振動によって生活環境の保全上支障が生じないように
3.石綿が含まれる物は、他の物と混合しないよう分けて運搬する
など、どれも産業廃棄物の運搬の基本的な内容となっています。
間違いやすい事例
建設工事で発生した産業廃棄物を元請け業者ではなく、下請け業者が運搬するケースがあります。
この場合、下請け業者は排出事業者にならないため、自社運搬には該当しません。
排出事業者は、発注者から注文を受けた元請け業者です。
また、元請け業者の車両を使用して、下請け業者の社員が運搬する場合も自社運搬にはなりません。
よって、下請け業者は収集運搬許可を取得し、元請け業者と収集運搬契約を締結する必要があります。
限られた条件において、下請け業者が許可なく運搬ができる例外はありますが、基本的には必要と考えることが良いでしょう。
まとめ
自社運搬とは、自社で処分場までの運搬や自社間等の廃棄物移動の行為を言います。
収集運搬業許可証が不要なため、収集運搬契約が不要です。
ただし、自社運搬に関わる事項を守って運搬しなければなりません。
産業廃棄物収集運搬車・社名の入った表示や廃棄物情報を携帯させることが必要です。
また、収集運搬に関する基本的なこともしっかり遵守しましょう。
当社でも、「自社運搬するので、廃棄物だけ持ち込める処分場を提案してほしい」といった相談も受け付けています。
相談内容に問わず、廃棄物のお困りごとはお気軽にご相談ください。